人生の中で、最も理不尽さを感じた出来事は
医師になるずっと前、社会人として働き始めて2年目で起こりました。
ある日突然事務室に呼ばれて行ってみた結果が
「今月いっぱいです」という、事実上の解雇通告でした。
まさに晴天の霹靂。しかも、上司も同じ部署の先輩も実は前から知っていて
知らなかったのは私だけだったという、とても惨めな状況でした。
ただ、今になって言えることは、この出来事は人生の中でも非常に大きな転機だったということです。
それがどういうことだったのかを、今回はお伝えします。
やりたいことがあったから、無職になっても傷つかなかった
やめなければならないと知った時、取り乱したり怒りに駆られるのではなく、かえって冷静になった自分がいました。
「来月から無職かぁ・・これからどうすればいいんだろう」
と思ったのも、実は束の間の話でした。
私には夢がありました。
「いつか一人で、高橋歩さんみたいに世界一周の旅に出たい」
高橋歩さんの著書「WORLD JOURNEY 」との出会いで、私は世界一周の旅に出たいと
いつしか思うようになっていました。25歳頃のことです。
「働きながらお金を貯めて、300万円ぐらい貯まったら退職して、1年ぐらいかけて世界一周しよう」
そう決めて日々働いていました。解雇通告は、そのさなかに突然降ってきた出来事でした。
手元にあったのは100万円ちょっとで、目標の3分の1程度でした。ルートにもよりますが、1年では
私の行きたかった物価の高いヨーロッパをじっくり回るには到底足りない額でした。
それでも、自分の中から湧き上がる思いがありました。
「世界に行くなら、今しかない!」
予算が足りず、計画していた期間からはずいぶん短くなり、行く国も絞らなければならなかったのですが
「きっとこのチャンスは、もう二度とないかもしれない。あとで後悔なんて絶対にしたくない!」と、私の決意が揺らぐことはありませんでした。
40代を迎えた今の私ですが、いつ思い返しても当時の自分に「よくやってくれた!!」と言い切れるくらい
思い切った、そしてその後の人生を変えてくれる素晴らしい決断でした。
私が医師になることを決意したのは、実はこの世界一周の旅が大きなきっかけなのです。
序盤で書いた「この経験が人生の大きな転機になった」とは、
解雇されて世界一周の旅に出てみたら、医者になりたいと強く思うようになり、
医学部を目指し、無事に合格し、医者になって今の私がある、ということなのです。
挫折や失敗は、大きな成功のもとになる
自分で「成功」と言ってしまうのはおこがましいかもしれませんが、少なくとも私にとっての「成功」とは
心からなりたかった職業に、今就けているということです。
今回伝えたかったことは、
挫折や失敗は、大きなチャンスの種になる
ということです。散々聞き古された言葉かもしれませんが、自分の経験を通して改めて感じていることです。
「ピンチはチャンス」は本当なのだと、はっきりと言いきれます。解雇された当時の私は、まさか今こうして医師の仕事をしているなんて
夢にも思いませんでしたから。
解雇されたことは、結果的に私の人生観や物の見方をガラッと変えてくれました。
私はもともと自己肯定感がとても低く
「医学部に入るなんて無理」と、大学受験に失敗して以来、無意識にずっと思っていました。
「医者になりたい」という思いが心の底にずっとあったのに、気づかないふりをして
自分で自分の心に蓋をしてしまっていたのです。
滑り止めの大学に行き、専門職の国家資格を取得し、普通にその仕事をしていくんだと
思っていた私の視野を大きく広げてくれた世界一周の旅。
いつも自分に自信がなくて、医者になりたいという自分の本心が
意識にのぼらないように、ずっと隠して生きていましたが
一人で無事に110日間の世界の旅を終えることができて、
「こんな私でも、10ヶ国以上を一人で旅することができた!」といつしかそれが自信になり
そして、世界には多種多様な人種がいて、様々な生き方をしている人がいるのだと
目で見て聞いて感じて、吸収できたことが自分の中で化学反応を起こし
「絶対医者になる!!」と、決意するに至ったのです。
だからきっと、どんな経験でも無駄にはならないし、いつどんな形で道が開けるかは自分の決断次第なのです。
解雇されて落ち込んで、自分の本心に蓋をして何も行動を起こさずに生きていくのか。
解雇されたって、新たなチャンスを掴めると信じて前向きに生きていくのか。
出来事をどうとらえて、どう行動するのかは全て自分次第なのです。
このことだけは、あなたにもわかってもらいたいから。
どんなに理不尽で辛いことがあったとしても、きっと大丈夫だと、わかってもらいたいのです。
この経験が、少しでもあなたに響いてくれたら嬉しいです。
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